たった数分の出来事。…でも、それが、何十分にも、何時間にも感じられた。

駆け出した足音。

それに振り返る私。

…彼女の手には、小さなナイフ。

私の前に、修二さんが立ち塞がる。

…何としても、私を守るために。

…修二さんは、彼女のナイフを左手でギュッと握りしめ、その手からは、血が滴り落ちていた。

…彼女の手は震えていた。

「…な、なんでこんな女がいいの⁈」

泣きながら叫んでいる。

その怒声に、何事かと社員たちが集まってきていて、騒然となる。

「…あんたには、わからないだろうな。こんな姑息な手しか使えないんだから」

静かに、でも、低い怒った声で、修二さんが言う。

「…女の嫉妬ほど、醜いものはないな」

とても冷たい言葉に、彼女はその場に力なく座り込んだ。