そんなはずはないと叫びたかった。


いや、心の中では実際に叫んでいた。



しかし言葉にしたくても声が出ない。


はっはっ、と荒々しい息が出てくるだけ。


胸のあたりが苦しい。


なんだ…


私が忘れているものってなんだ…?





『私を殺したのはあなた。


それなのにあなたは私を差し置いて幸せになるの?


…冗談じゃないわ。



人の命を奪っておいて



一人で勝手に幸せになってんじゃないわよ!!』




言葉のかわりに溢れる涙。


…あぁ、やっとわかったよ。


あの時から片時も忘れたことなんてなかったのに


最近は体育祭で忙しかったから、


めんどくさいことを楽しんでたから、



忘れていたんだ…



私が犯してしまった罪を。






『あなたが幸せになる権利なんてないんだから!!』




…知ってるよ。


私が幸せになっていいはずがない。


誰かを好きになっていい人間じゃないんだ、私は。



そうだよね、







ー"母さん"…。










そう呟いた瞬間、


私の足元は底が抜け、体が一瞬宙に浮いた。





最後に見た母さんは


軽蔑の瞳をした



悲しい顔をしていた。





落ちていく私は





静かに目を閉じた。






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