どれくらい走ってたんだろう?
とうとう私は足を止めてしまった。
どうせ出られないのなら、無駄なことはしたくない。
めんどくさいことは嫌いなんだ。
すると次の瞬間、
遠くにあったはずの光がものすごい速さで近づいてきて
私を包み込んだ。
暗闇が消えていく。
…なんて温かい光なんだろう。
…とても懐かしい気がするのはなんでなんだろう。
すると、向こうから知ってる顔が近づいてきた。
でも肝心の名前が出てこない。
忘れてはいけない人のはずなのに。
一体この人は誰?
その人は私の目の前までやってきて、話しかけてきた。
『夏美、元気だった?』
ーうん、元気だよ。
心とは裏腹で、私は普通に答えていく。
どうして私の名前を知っているの?
私の口なのに、思うように動かない。
勝手に進められていく会話。
『あの人たちも元気そうでよかった。』
ーうん、みんな元気だよ。
『そういえば、聞いたわよ。夏美。
好きな人できたんですって?』
ーえ!?なんでそれを?
『桃ちゃんから聞いたのよ。』
ー桃のやつめ…
『まあまあ、そう怒らないで。』
ー…はーい。
ふてくされながら返事をする私。
暗闇の中にいたときとは違い、心が軽くなっていく。
不思議だな。
この人といると元気になるんだ。

