中学生になった私は相変わらずいじめられた。


靴や教科書がなくなるのなんて当たり前。


机の落書きはひどいし、

たまに花瓶まで置いてある。



学校に少しでも私物を放置してたら、すぐになくなった。


見つかる場所は大抵ゴミ箱。



でももう慣れてしまったことだから。


悲しくなんてなかった。



…そう言ってないと、涙が溢れてしまうほど

私の心はズタズタだった。




そんな生活を送っていたある日。


いじめは日に日にエスカレートしていき、


この日は教室でバケツの水をぶっかけられることになった。


先生の目がない昼休みのときだし、 


クラスメートは自分の身を守るために知らんぷり。


中にはこっちを指差して笑ってる人もいた。


この教室内に助けてくれる人なんて誰一人いないと思ってた。




体育のない日だから着替えの体操服はないし、


びしょびしょのまま授業を受けるのかと、諦めて目をつぶったときだった。



バシャッ


水をかける音が聞こえたのに、私には何もかからなかった。


恐る恐る目を開けてみると、


目の前にいたのは顔面蒼白のリーダー格女子と


全身ずぶ濡れの青山夏美だった。




「なっ、何してんのよ、青山さん!」


驚くリーダー格女子。


そりゃそうだ。

私だって驚いてる。


なんで今まで接点のなかったこの人が、私のかわりに濡れているのだろう。

…なぜ?



みんなの視線が青山さんに集中する中、彼女の一言目は



「…大丈夫?」


私の身を案じる優しい言葉だった。