高野くんが出て行くととたんに静寂に包まれた。
…このお通夜みたいな状況で話せと?
まぁ、自分が蒔いた種だから仕方ない。
「さてと…どこから話そうかな。」
「…最初から。」
「はいはい。」
むすっとした顔の桃だけど、私の話を静かに聞いてくれた。
1週間前に渡辺さんに呼び出されたこと。
体育祭で休憩のときに捕まったこと。
『あること』を理由に殴られたこと。
…全部、話した。
『あること』以外は。
「その『あること』ってなに?」
話し終えて真っ先に聞かれた。
それもそうだ、今回の原因はそれなのだから。
「…高野くんと二度と話すなって。
それはできないって答えたら、殴られた。」
「…できないって言ったの?
なんで?」
…なんでって、今それ答える必要ありますかね。
まぁ、これ以上怒らせたくないから言うけども。
「…なんとなく、話せなくなるのは嫌だなって。
なんとなく思っただけ。」
「…ふーん。」
なぜかちょっと楽しそうに聞こえるのは気のせいですか。
いや、気のせいじゃないな、桃の顔がにやけてるよ。
なんで!?
オロオロする私に、桃は爆弾を落としてきた。
「夏美って…
高野くんのこと好きなの?」

