戻る途中ケガの具合を確かめた。
足はくじいたものの痛みは軽いので何とか走れるだろう。
でも問題は肩だ。
バトンパスをするとき、右を使うのに思うように動かない。
もしかすると、肩がはずれている可能性がある。
…まずい。
リレーはバトンパスが大事なのに。
でもこの状態でやるしかない。
そう思いながら応援席へ行くと、桃は仁王立ちで待っていた。
「トイレ行くだけで何分かかってるの!?」
「ごめん、お腹の調子悪くて。」
とっさに嘘をつく。
ごめんね、桃。
「それでも、もうすぐ1時間たつんだけど!
どんだけ時間かかってんのよ!」
「途中木にボールが引っかかってて、よじ登って取ってた。」
…これは前にやったことがある。
今回はやってないけど。
「またそんなことしたの?
それは危ないからやめてって言ったでしょ?」
「そうだったっけ。」
「ほんと、すぐ忘れるんだから。
…それで全身ボロボロなわけ?」
…改めて自分の恰好を見ると、たしかにボロボロだった。
桃は怪しんでるな。
でもここでバレるわけにはいかない。
ケガしてるとわかったら、無理矢理保健室に行かされるのがオチだ。
「まぁ、そんなところ。
ところで今どうなってる?
赤勝ってる?」
「…一応勝ってるけど、他のクラスも追い上げてきてる。
次のリレーで優勝決まるんじゃないかな。」
眉をひそめながらも答えてくれた桃。
本当のこと言えない自分が嫌になるけど、こればっかりは譲れない。
「クラス対抗リレーに出る人は招集場所に移動してください。」
タイミングよく流れるアナウンス。
「じゃあ、行ってくる。」
「うん!
…無理しないでね。」
…もしかしたら全部ばれてるのかもしれないな。
渡辺さんに殴られたことも
リレーに出たいから本当のこと言わないことも。
ごめんね。
私のわがままに付き合って。

