「女子50mに出場する人は招集場所に移動してください。」


アナウンスが響き渡る。


あ、これ私が出るやつだ。


「夏美、初陣だね!」


「まぁ、うん、そうだね。」


「もう!テンション低いなー!

もしかして緊張してるの?(笑)」


「んなわけないでしょ。

私はいつもこんな感じ。

それじゃ行ってくるね。」


「はーい!いってらっしゃーい!」


相変わらずテンションの高い桃に手を振って招集場所へ向かう。

緊張はしてないけど、こけたら嫌だなくらいは思っていた。


目的の場所に着くと、後ろからぽんと肩を叩かれた。

振り返ると


「やっほー!夏美ちゃん!」


ニカッと笑った今井さんが立っていた。

黒髪のショートヘアがとても似合う女の子で、誰にでも分け隔てなく接してくれるところが彼女のいいところ。

リレーで一緒になってからこうやって私にも話しかけてくれるようになった。

…少しはそういうところを見習わないとね。



「どうも、今井さん。」


「テンション低いなー!

せっかくの行事なんだから楽しもうよ!!

あと、今井さんじゃなくて杏(あん)って呼んでよー」


「あ、ごめん、つい癖で。」



桃以外の人を下の名前で呼ぶのは久しぶりすぎて、なかなか苗字プラスさんづけの癖が抜けない。


「杏、ちゃん。」


少しぎこちないけどそのうち慣れていきたい。



「うん、それでよし。

あ、そろそろ出番だね。

お互いがんばろ!」


じゃあね、と言って向こうへ行ってしまった。