もうなにがなんだかわからなくなっている私に、彼はわざとらしくため息を吐いて一言。
おれスマホ持ってるけどいいの、と。
「え、それがなに?」
スマホ持ってるからなんだっていうんだ。そんなの、みんな明日死ぬんだし持ってても意味ないと思うけどね。 それよりもその手を離してほしい、そして早く帰らせてほしい。
すると彼は、はあ〜っとさっきよりも大きくうざったらしくため息を吐き、「ほんとあほだな」と小馬鹿にしたように言った。 完全にケンカを売っているんだと思う。
「貸してやろうかっつってんのにいーんだ?いらないんだ? へーえ」
「えっ」
「このスマホさえあれば、あんたは家に電話することもできるし、マップだって使えるのにいらないんだ? 自力で帰るんだ? へーえ」
「あ……ナルホド〜」
私の目の前でシルバーのスマホがちらちらと揺れる。
ああ、なんという失態をしてしまったんだろう……。 少し考えればわかることなのに、言われるまで気づかなかった。
そもそも人と出会った時点でまず確認すべきことだった。 最初にこの人を小学生だと思っていたとはいえ、最近の小学生はスマホなんか持ってるのも当たり前らしいし……この人の言う通り、私、あほすぎる。



