小さな檻でゆるやかに進む僕らの時間。僕はそれが愛おしく、どうしても手放したくなかった。


だけど、いつも引っかかってたんだ。

ユキはこのまま何も知らずに死んでいくのかって。ユキは今、平凡な僕との恋を選んで本当にあの頃より幸せなのかって。いまもユキのことを心配するレイは、本当にユキを僕に任せたかったのかって。



そして、僕らの命の期限があしたに迫った今日、僕はふと思った。

あんなにも愛し合っていたふたりがすれ違ったまま、死んでいく。 僕はそんなことを望んでいなかった。



「遅くなってごめん」



こんなギリギリまで自分の幸せを優先し続けた僕が言えることじゃないかもしれないけれど、僕は君が後悔なく終われる選択をしてほしいんだ。


もう君たちを傷つける人なんていない。
だから大丈夫。自分がしたいようにすればいい。 もう怖がらなくていいんだよ。

ーーねえ、ユキ。僕の瞳を見て。



「あした星が降る瞬間、ユキはだれと一緒にいたい?」



ユキの瞳からはらはらとこぼれ落ちる星屑にキスをして。

さようなら、檻を脱け出した君がどうかまっすぐに走っていけますように。星が降るその瞬間(とき)まで、僕は君の幸せを願ってる。