「…………」




「…………」




気まずいよね…やっぱり。




智希はどんな気持ちで、私に『行ってこいよ』って言ったんだろ…




逆だったら…




もし智希の元カノが現れたりしたら…




『行ってきなよ』って言えるかな?




でも、信じてたら…




きっと言えるよね。




「彩音ー!」




梨華が走って来た。




ちょっと…助かったって正直、思ってしまった…




「ご飯食べよっ…」




梨華が見つめてる先には、智希に渡し損ねたお弁当。




梨華の手元には、私の分と梨華のお弁当。




明らかにおかしいよね…




智希も私と梨華の手元を見て、不思議そうな顔をしてる。




「それ…誰の?」




「あっ…えーっと…」




『智希の為に作ってきたんだ』って…




言えない…よね…




こういうのが距離だよね…




「いっぱい作りすぎて、余っちゃって…」




梨華は、何かあったんだって顔をしてる。




自分が背中を押した事に申し訳なさそうにしてた。




「だったら…俺にくれない?」




「えっ…だって…食べたんじゃあ…」




「上原が作ったの食べたら、リレー優勝しそうな気がしてさ。うまいって知ってるから」




そう言って、私の手からお弁当を持っていった。