「もしもし…」




電話の向こうで、愛しい人の声がした。




携帯電話が普及してる時代に生まれて、本当によかったと思う瞬間だった。




「もしもし…今、福岡に着いたよ」




「うん…」




やだ…泣きそう。




永遠に会えなくなるわけじゃないのに…




明後日には会えるのに…




どうして、こんなに苦しいんだろう…?




「どうした?元気ないな」




「ううん。元気だよ。ちょっと宿題が進まなくてへこんでただけ」




わがままは言いたくない。




誕生日に時間作ってくれたんだから、それでいい。




「あっ!地理が進まないんだろ?苦手だから」




「そうなの!全然、分かんなくて…」




電話って…相手の顔が見えないから、よかったって思う事もあるね…




だって私…笑えてない…




「……本当は彩音に一緒に来て欲しかったんだけどな。でも…仕事だからさ。ゴメンな」




智希…本当にそう思ってくれたの?




私…うれしすぎて、どうしていいのか分からないよ…




「仕事だから仕方ないよ。頑張ってね。明後日、楽しみにしてるから」




「おぅ。バリバリ頑張って、早目に帰れるようにするから。結婚したら…一緒に来てな」




「うん…」




精一杯の言葉だった。




涙が溢れて止まらないから。




私…このままじゃダメだ。




弱すぎる。




強くならないと…。