「待ってよ遥翔くーん!!」

「今日こそ一緒にお昼…」


ちっ、まだ付いてくんのかよ?

音楽室前の廊下を走り抜け角を曲がった時。

…ドンッ

「うわっ」

「きゃっ」

バサバサバサ

- やっちまった…

ぶつかった女が抱えていた楽譜の束が廊下に散らばった。


…え、何こいつ…

俺はぶつかった女に目を奪われた。

透けるような白い肌にくりくりの大きな目。

通った鼻にピンクの薄い唇。

緩く巻かれた肩にかかる茶色い髪の毛。

こんなに可愛いやつ、この学校にいたっけ?


「もぉ~遥翔くん逃げ足速すぎ~」

その声で現実に引き戻される。

「あ~、ごめん。大丈夫か?」

差し伸べた手をきゅっと掴んで立ち上がった彼女は

「ありがとう、大丈夫です。
それより、早く行かないと追いつかれちゃうよ?」

そう言ってふわっと微笑まれる。

その笑顔に見惚れる間もなく…


「あっ、遥翔くん発見!」


「悪ぃな」

それだけ言って散らばった楽譜を横目に

廊下を駆け出した。