「……でも……愛じゃなかったよね………私達……」



今更ながら、それを認める。
口にしながら、それが一番怖かったんだ…と気づいた。



「愛には……ならなかったね………6年も…一緒にいたのに………」


航の顔を見る。
笑っても泣いてもいない彼の口が、重く開く。



「…ならなかった……。ただ…甘え合ってただけだ……」


言葉にすることで強くなろうとしている。
甘ったれた自分を感じながら、それでも止められなかった私達。

あの子が教えてくれた。

大人になる為に、大人にする為にできた命。

そして、それは…流れていったーーー。



「……もう二度と……間違った生き方できないね……」

失った者に背中を見せるような生き方はできない。
これからは前を向いて、強く生きていかないとーーー。


「ああ…もう同じことは繰り返せない」

しっかりと頷く彼の目を見る。
今までにない光を感じて、私は次の言葉を放ったーーー。



「じゃあ…これで…本当にサヨナラだね」


二度と間違わない生き方への選択。
私達はそれぞれの場所で、新しい人生を見つめ直していく。



「ああ。サヨナラだ」


この温もりとも、この腕ともサヨナラ。


「今まで…ありがとう……」

「こっちこそ……ずっと…夕夏に感謝してる……」


見つめる瞳が近づいた。

最初で最後ーーー……


思い出を残さないように


彼と優しくキスを交わした……。