「航……!」


ぎゅっとしがみついた。
ずっと、ずっと、こうしたかった。

あの日……手術の後、こうして航に謝りたかった……。


命を代替えにした。
自分の自由と引き換えに…命が流れることを願った……。


奇跡なんだと知らずに…そうなって欲しい…と思った……。


「私は、最低だった!産みたくないと思った!生まれてほしくないと思った……!航との子供なのに……せっかく…この世に息づいた命だったのに……!」


我慢していたものが噴き出した。
声を上げて泣き叫ぶ私を、航が必死で受け止める。

同じように声を出し、傷を…舐め合うようにしてーーー。


「夕夏だけじゃない……こっちも親になる覚悟なんてなかった……同じだ。変わらない……!」


「…航……」




ーー6年間、大好きだった人。
気弱で繊細で、礼儀正しくて、人一倍…優しかった人。


頼り合うことで、逃げてきた。

いつまでも…そのままでいたかった。

でも、そうじゃ駄目だって教えられた。


大人になる時期がきてるって……教えられた………。



「私ね……航が大好きだった……何もかも全部……きっと…大好きだった……!」

自信を持ってそれは言える。
一緒にいたいと願った、ただ一人の人。

でも、それはまるで、自分一人で居るような感覚にも似ていた……。


「僕も夕夏のことが大好きだったよ。誰にも負けないくらい、君を想った……」