…だから、キミを追いかけて

祭り会場からは、どよめきと拍手が聞こえる。
それらは打ち上がる花火が開く度に、かき消されていく。


加速し続ける打ち上げ花火がラストを迎え、ピストルの音が鳴り響いたーーー。




「……悪かった……」


消え入りそうな声を出した彼を前に立ち竦んだ。


別れを告げた時と同じ空気が、私達の間に流れていた……。








ーーー花火大会が終わり、人々が徐々に動き始める。

帰路につく人波を避けるように海岸へと近づく。
波打ち際に立つテトラポットを背にして、航は話し始めた。



「夕夏が出て行ってから……正直…ホッとした……」

気を使わずに済んだことを、彼は素直な言葉で表現した。

「毎日…何処か責められてるような気がしてたから。僕は何も…代わってやれなかったから……」

妊娠も、流産も、女性だけのもの。
男性にはない身体の機能なんだから仕様がない。

「航のせいだなんて思ったこと……一度もなかったよ。私は……自分が………」

声が詰まる。
泣き出しそうになる。
此処へ戻って来てから、何度も同じことを思った……。

それらを認めるのに……勇気がいったーーー。


「……自分が……愚かだったと思う。命が流れたのも…仕方ないと思ってる……」


腹立たしかったのは自分。
憎らしかったのも自分。
許せなくて悔しくて、それを航に当たり散らしていただけーー。