…だから、キミを追いかけて

怖さがそうさせているのは知っていた。
失った命の重さを感じたからじゃない。

新たな命ができるのが、怖かったからーーー。



2週間くらい仕事を休んで復帰した。
出血は止まっていたけど、下腹部には鈍い痛みの様な感覚が消えずに残っていた。


心は沈んだまま這い上がれなかった。
航の顔を見ると、特にイラついて仕方なかった。



『別れよ』

自分から切りだした。

これ以上一緒にいたら2人とも駄目になる……。
傷口を広げ合って痛み続ける……。


『サヨナラ。いろいろゴメンね……』


少ない荷物を持って自分のアパートへ戻った。
航に訪ねて来られるのが嫌で、故郷へ帰ろうと決めた。

心配して連絡してくる父に引越しの手伝いを頼んだ。
大きな荷物の整理をお願いし、故郷へと舞い戻ったーー。



懐かしい景色を前にして、ホッとするような気持ちも確かにあった。

でも、心は晴れず沈みきったままだった。


いつまでこんな気持ちのままなのか。
もしかしたら…ずっとこんなままなのか。


そんなことを思いながら布団の中で泣いた。


……夜中になって雨足が強くなってきた。

パラパラ…と、窓に当たる雨粒の音を聞きながら、頼りない自分の存在を…激しく罵っていたーーー。