…だから、キミを追いかけて

「航……」

意識を失う寸前、名前を呼んだ。

あの日から会うことすらも拒んできた人に、(会いたい)…と思う自分がいた……。



「…どうしたの!」

ビックリしたように清良が叫んだ。

「えっ…?」

ぐすっ…と鼻の鳴る音に気づく。
いつの間にか涙が溢れている。

慌てて拭った。笑いながら、涙の理由をこう説明した…。

「ちょっと焦った!あんな失礼な奴に力を借りを作ったのかと思ったら、悔し過ぎて涙出る!」

止まらない雫を笑いながら塞き止める。
言葉とは裏腹に涙は零れ落ちてくる。
セーブできない。
こんなの初めてだ……。


バサッと肌布団を被った。
額だけ出した状態で、澄良に謝った。

「ごめん…やっぱ少し調子悪いから寝るね……おやすみ」


背中を向けた。
涙が止めどなく溢れ出るのを知られたくなかった。
漏れ出しそうな声を聞かれたくなかった……。


「…ゆっくり休んで。明日はお店も休みだから…また明日話そ…」

トントン…と優しく肩を撫でる。
昔のまま、澄良は優しい態度で接してくれる。

「ん……」

声にならない返事をした。
優しくされると自分が惨めになる。


退院した後の航のことを思い出す。




ーーー彼は腫れ物にでも触るかの様に、私に接してきた。
体に触れることはなくなり、キスすらもしてこなくなった…。