…だから、キミを追いかけて

電話口で妊娠を聞かされた航は、ぽそり…と小さく聞いた。


『産むのか?』


自信なさそうな声だった。
『当たり前でしょ!』と、強い言葉を言える勇気もなかった。


『……どうしようか…悩んでる…』


命の灯火は消えようとしているのに、何故かそれを望む気持ちの方が強かった。

大人になりたくてSEXをした筈なのに、親にはなりたくない気持ちがあった…。




我が儘な私達に、神様は命を預けてくれなかった。


出血は治まらず、3日後、胎児の心音は止まったーーーー。



堕胎手術の為に保証人が必要だった。
父と祖母を呼んだのは、そのサインが欲しかったからだ。


……祖母は私の顔を見て、『馬鹿もん!』となじった。
それでも、保証人の欄にはサインをしてくれた。

父も祖母も相手を知りたがった。
だけど私は、もう別れた人だから…と言って会わせなかった。


気弱なところがある航に、嫌な思いをさせたくなかった。
傷つくのは、自分一人だけで十分だと思っていた…。


手術が済んだ翌日、退院した。

仕事を休み、休養するように…と祖母に言われた。

『普通の出血と違うんやから、無理したらいかん』

母に内緒で来たから長くは居られないと言い、2日間だけ一緒に居てくれた。

心強かった…。
ある意味、航よりも遥かに頼りになったーー。