…だから、キミを追いかけて

目が覚めた時、真っ白い布団の中にいた。

見たことのない場所で、何処だろう…と思った。



『お目覚めですか?ご気分は如何です?』

ペパーミントグリーンの服を着た女性に声をかけられた。
薄いメイクをして、髪を後ろで束ねている。
手には懐中時計を持ち、手首で脈を測っているところだった。

『処置は済みましたよ。赤ちゃん……残念でしたね……』

しんみりとした顔で教えられた。

ーーー3か月前に起きた…出来事だった……。
 


……妊娠していることは薄々気づいていたーーー。

航にも話そうかと思っていたところだった。
生理が遅れていることを、彼も心配していたから……。



『できていたらどうする?』

冗談半分で聞いたのは、2週間ほど生理が遅れていた時。
顔を引きつらせた航は、誤魔化すように茶化して笑った。

………明らかに、困ったふうな顔だった。

3週間、4週間……

日が経つにつれ、不安が大きくなった。

覚悟もないまま親になる勇気なんて、私にも航にもなかった。


6週間目、薄い出血が始まった。
滲み出るような量の出血は、だらだらと1週間ほど続き、さすがにおかしいと思い始めた。


『病院へ行ってくる…』


意を決してそう言った。
無言のまま、航が小さく頷いた。



尿検査の結果、妊娠は判明した。
でもーー……

『切迫流産の危険があります。直ぐにでも入院して下さい』


ーーー大いに戸惑った。
仕事場に休むことを伝え、航にも連絡を取った。