…だから、キミを追いかけて

すっかり社交的になった澄良を見て、高校時代とは立場が逆転した様な気分に襲われる。


「人見知りー⁉︎ この野良ネコがー⁉︎ 」

サルが…いや、波留が驚く。私は人見知りな訳じゃない。慎重に人を観察してるだけだ。


「いい加減人を野良ネコ扱いすんのやめてよ!ネコじゃないって言うてるやろ!!」

アルコールの回ってきた口から地元訛りが飛び出す。
雰囲気が突然柔らかくなる。私が町内人だということを、皆は知らなかったらしい。


「クルクルの巻き髪なんかして、都会もんかと思った!」

星流と名乗ったチョビ髭の男性が3杯目のビールを注いでくれた。

「マスカラもグロスもきれいに塗ってぇ…えらいべっぴんさんだもんねー!間違えるわー!」

星流の奥さんだと言った女性が煽てる。

「夕夏は肌が白いけぇ…メイクも映えるよねー!」

とどめは澄良。
やりきれない。

「褒め過ぎ!なぁんも出んよ!」

戯けて言うと、前の席にいる人がボソッ…と言った。

「お調子もん!」

いちいち角が立つ。
ムッとして、波留を睨みつけた。

「怖っ…!」

素知らぬフリして飲みだす。

さっきから見ている限り、相当飲んでいるのにちっとも酔っていない。
まさか、お酒じゃなくて水?と疑いたくなるほどだ。


そんな訳ないか…と思い直し、4杯目のビールを手酌で注いだ。