ーーー初めての経験は、痛みと擽ったさと熱っぽさしか記憶にない。
処女でなくなったから…と言って、外見は何も変わらない自分。

嬉しさもときめきもなかった。
皆、きっとそうなんだろう…と思った。



貸切の時間が迫ると、もの凄くホッとした。
航に触れられなくて済むことが妙に嬉しく感じた。

苦痛だけを得ていた訳でもないのに、えらく安堵していた。
この部屋の中から早く逃げ出したい気持ちが高まっていた……。


『出ようか…時間だし…』

ベッドから立ち上がった私の腕を航が強引に引っ張った。
荒々しく抱き寄せられ、濃厚なキスをした。

身体中が震えて、頭の中が目眩を起こしかける。
逃がして欲しい気持ちと、そのままでいたい気持ちが交錯して、なす術もなく立ち尽くした。

『やめて…』と言う声と『離さないで…』と言う声。
どちらの声も聞けず、ただ流されるだけの自分でいた……。



『……大事にする』


唇を離し、決意のような言葉を呟かれた。
目を合わせる。
真面目な航の瞳の中に映る自分。
困惑した様な表情を浮かべている。
なのに、口からはこんな台詞……

『私も……航を大事にする……』


ーーー丸ごとの私を引き受けてくれた。
ーー全部、初めての人だから。


…まだ、好きって気持ちはないけど…これから育てていけばいい。


(私はこれから、航を好きになる……)