…だから、キミを追いかけて

家へ帰ると、祖母が洗濯物を取り込んでいた。

「替わるよ」

何かをしていた方が気が紛れると思い声をかけた。
祖母は、何もしなくていいから休んでおき…と言った。

「あんた顔色悪いよ。ここは私で大丈夫やから横におなり」

「……うん…」

申し訳ない気持ちを抑えながら2階へと上がる。
部屋の窓から海が見える。
篭った空気を追い出すつもりで窓を開け、波の音に耳を澄ませた。



ーー航との初めてを思い出す。

初めてのSEXは、さざ波の音を聞きながらだった。
この町ではない海岸線の側に立つホテルへ2人で立ち寄った。


4回目のデートをした帰り、突然の雨に降られてびっしょりになって……


『…あそこで服乾かそうか』

航が指差した先に、ネオンで光ったラブホテルがあった。
同級生の間で、何度か話題に上っている場所だった。


『処女を捧げる場所』ーーーーそんなふうに言われていた。


ごくっと唾を飲み込んだ。
あそこへ行けば、自分も初めてを失うのか…と緊張した。

でも、航はそんな私の緊張を肌で感じたように……

『大丈夫。服を乾かしたらすぐに出るよ。無理強いしない。心配しなくていい』

笑って言ってくれた。
子供のように扱われて、なんだか面白くなかった。

早く大人になりたかった。
処女を失えば、自分も大人になれそうな気がした。

だから……


『別に…無理なんかしてないよ……航なら…私も嬉しい……』