…だから、キミを追いかけて

ーーー今日塀に上ったのは、それを思い出したくなかったから。

あの日のことを全部忘れて、上書きしたかったから……。




(……そういう点では感謝だな…)


波留という男性の行動は意外だった。
まさか灯台の突端から人が降りてくるとは思わなかった。


上書きされた記憶は正しく私の脳裏に焼きついた。


「でも、失礼にも程があり過ぎる!」

思わず呟く。

人のことを『野良ネコ』だなんて、あんまり過ぎだ。


「それを言うなら自分は野ザルじゃない!」


ブツブツ…と独り言。

波留との出会いは最悪な思い出として頭に残り、見事なまでに自分の過去を打ち消してくれたーーー。