「アホかお前!命を粗末にしようとすんなっ!死ぬくらいの勇気があるなら生きれ!バカッ!!」


勢いに圧倒されて身を竦める。

勘違いも甚だしい。


誰が死ぬか。



「馬鹿はあんたでしょ!!」


思わず怒鳴り返した。

そのままの勢いで言い返す。

「私は死のうとしてたんじゃない!海を眺めてただけっ!!」


死ぬ訳ないじゃない。
死ねる訳ないじゃない。

誰よりも私は、命の大切さを知ったばかりなのにーーーー!



ぎりぎりと歯を噛み合わせながら相手のことを睨んだ。

この人に分かる訳がない。
私がどんな思いで、この土地に戻ってきたか……。



「離してよっ!セクハラで訴えるわよっ!!」


強引に腕を振り解いた。

握られていた手が離れる。
軽くなった分、その人の力強さを感じた。


「フンッ!」


鼻息を荒くしてそっぽを向く。
相手は呆れるようにこっちを見つめ、それから負け惜しみの様な言葉を吐いた。


「海見るだけなら塀に上んなっ!ネコか!お前は!!」

要らない言葉にムッとする。だから、また言い返す。


「私がネコならあんたはサルでしょ!!あんな上からロープ伝って降りてくるなんて、どう考えても変だしっ!!」


まともな人がやる事じゃない。
そもそもそのロープだって、何処から取り出してきたのよ⁉︎