思いを伝え合った翌週、波留は消防訓練学校へ行った。
何年か毎に行われる学校での訓練は厳しいらしく、その間、彼からは何の連絡もなかった。


「波留の奴、市の消防署に変わるんかな……」


珍しく星流が静かだった。
同級生3人組の1人がいなくなる………それは、想像以上にショックなことだったらしい……。


「ユウカちゃん、波留から何も聞いてないん?」

佳奈さんが、ビールを飲む手を止めて聞いた。
島にある居酒屋で、2組の夫婦と飲んでいるところだった。

「私は何も…。波留はまだ決まっとらんから話せん…って言っとった…」



ーー あの日、私からの伝言を直接聞いた波留は、「アホか…」と、指で額を小突いた。

「あくまでも可能性アリ…ってなだけや。俺は今のところ、この町から出ようなんて思っとらん。折角、お前と気持ちが通じ合うたのに、そんな勿体ないことするか!」

一緒に町の再発見に出かけた日、無邪気に景色を眺めて燥ぐ私を、波留は(可愛い奴…)と思ったらしいーーーー。


『憎たらしいことばっか言うて変に意気がるから、どんだけ可愛げのない女なんや…と思うとったけど、俺のこと笑いもせんと、「感動した」だの「尊敬する」だの言うて、子供っぽいとこ平気で見せるし、かと言えば「流産してごめん…」とか、たまげる様な言葉を吐くし……。お前って女が掴めんで、俺は初めて迷ったぞ。……キヨ以外の女に意識が飛ぶとか……どうかしとるとしか思えんかったわ……」

気持ちの変化を言葉にしながら、それでも……と波留は続けた。