…だから、キミを追いかけて

「……いつ行くん?そこに…」

動揺を隠しながら聞き返した。

「来週…?…とか、言ってなかったっけ……」

よう覚えとらんわ…と笑って誤魔化される。
波留が何処へ行こうが、清良にとっては特別焦ることではないらしい。

波留と同じ島に住み、波留と同じ誕生日の人と結婚して、毎年恒例のように開かれるバースデーパーティーの席でも会えるんだから。

ずっと澄良を好きでいる波留の気持ちも知らずに、幸せそうな笑顔を見せて………



「ズルイよ………澄良は………」

呟きながら、自分の心が惨めになっていくのが分かる。

人を好きになるのって、美徳でも何でもない。

悔しくて苦くて、切ないくらいに胸が痛む。

ドキドキなんかよりもキリキリする。


澄良なんかよりも、私の方を向いて欲しい…という独占欲が湧いてくる。


女子に見られたい。波留の口から、女性だと認められたい。


好きになって欲しい…という贅沢は言わない。
だけど………せめて大事な人として思ってもらえたら…………



「夕夏……?」


下から顔を覗き込まれた。
涙で潤みそうになる、目頭を押さえて謝った。


「ごめん……澄良はズルくない。今のは言い過ぎ………」


波留の心を一人占めにしているのは、澄良じゃなく波留自身だ。
自分で勝手に思い込んで、それでいい…と理解している。
片想いの苦しさを乗り越えもせず、只ひたすら、思いを募らせているーーー。