澄良に対して一途な想いを持ち続けている波留に、自分のような人間は釣り合わない。
例え、どんなにその結びつきが強くなったとしても、重なり合ってはいけない気がしたーーーー。


(素知らぬフリをして下りよう。もうこの場所に、2人で居るのはヤバい……)


「……ねぇ…波留………」


伸びてくる手を寄せ付けないよう後ろへいざった。だけど、灯台の上部は狭くて、完全に届かない場所へは逃げれない。

あっという間に腕を掴まれ、引き寄せられる。近付いた熱い吐息に目を瞑り、彼の唇を受け入れた。


ぐらぐら…と、決心が揺れ動いていくのが分かる。
こんな所へ波留と2人で来たのも、もしかしたらこういう展開を待ち望んでいたからかもしれない。

純真に一人の人を想い続ける波留に対し、新しい恋を提供したかったーーーーー。



離れていく唇を惜しい…と思いながらも、2度目はさすがにしなかった。
波留は何処か反省したように目を伏せ、こちらも見ずに呟いた。


「下りようか…」


諦め口調のように聞こえたのは、気のせいだっただろうか。
こくり…と無言で頷く私よりも先に、波留は下半身を下へ滑らせた。

「今度は俺が先に下りる。お前はゆっくりでええから後ろ向きに下りて来い。…ええか、絶対に足元を見んなよ。動けんようになったらいつでも叫べ。俺はお前のすぐ下におるから…」

頭の先が見えなくなってから、ゆっくりと足先を梯子の段に下ろしていく。
上ってきた態勢のまま、前だけを見て下りる。その動作中、同じ筒の中にいる相手のことを思った。