「いっつもあの上から、人の命を守っとるんやろ⁉︎ 上るのなんか訳ないやん!」

きっと一緒に上ってくれる。

……そう確信していたのにーーーー




「お前とは上らん!」


きっぱり断られた。


「なんで⁉︎ ケチ!」
「ケチで言うとるんやない!理由があるんや!」
「理由…?何よ、それ!」

「それはやな…」

言いかけた波留が、何かに気づいたように口を閉ざした。

見ている先を振り向く。
ロビーに続く扉の前で、お姉さんがニヤニヤしながらこっちを見ていた。


「と…とにかく、お前とは上らん!上るなら1人で行けや!」

さっさとホールを出て行く。
その背中を見ながら、「何よ!」と呟いた。



澄良の店に帰る途中も、私達は一切口を利かなかった。

私は波留のツレない態度が気に入らなくて、波留はお姉さんに冷やかされたのが気に入らなくて。





『ーーあんた達、なかなかお似合いよ!』

出口でお姉さんに冷やかされた。
肘を突かれて煩そうにしていた波留は、お姉さんの言葉を全く無視していた。


『また遊びにおいでね。親にも夕夏ちゃんのこと話しとくから!』

『えっ⁉︎ いえ、あの、私は……』


『夕夏っ!』

一際大きな声で邪魔されて、おかげで否定はできなかったんだけど……