波留たちの誕生日祝いは、それから1週間後だった。
当日よりも早目にしたのは、私の誕生日祝いも兼ねているからだ…と澄良は教えてくれた。


「私の誕生日まで祝わなくても良かったのに……」

『Sea Wind』に着いた私を招き入れる彼女に呟いた。

「ダメよー。夕夏の誕生日も祝おう!って波留が大はりきりだったんだから…」

チリンチリン…と涼やかな鉄パイプのドアチャイムが鳴り響く。
店の中では、海斗さんや星流家族の他、島の若い面々が勢揃いしていた。


「ユウカちゃん久しぶりー!」

星流はグラスとビールを片手に近寄って来た。
車だから…と言い訳する私の声など聞きもせず、トクトク…とビールを注ぐ。

「乾杯しよーぜ!乾杯!」

音頭取りのようにグラスを持ち上げる。
皆は星流の方を向き、グラスを掲げた。

「ユウカちゃん、海斗、波留!誕生日おめでとー!ハッピーバースデ〜〜♫!!」

何かの曲が混ざるように、最後は節付きだった。
周りが笑い出す。それと同時に、グラスが鳴った。

「ユウカちゃん、誕生日おめでとう!」

佳奈さんと帆崇君が寄ってきた。
2人とグラスを合わせ、きゅっと帆崇君を抱きしめる。

これまでとは違う意味で、私は彼の匂いを嗅いだ。


「襲うなよ!」

頭の上から声がする。
陽に焼けて黒ずんだ肌の人は、立ち上がった私とグラスを鳴らした。