…だから、キミを追いかけて

仕事から戻り、母は父との馴れ初めも教えてくれた。

島の灯台に上って下りれなくなった母を助けたのが、遊びに来ていた大学生の父だったそうだ…。

「カッコ良うて、スマートな喋り方で、優しゅうて……」

少なくとも、若い頃の自分にはそう見えた……と笑って話した。


「おばあちゃんが、お母さんは『恋で盲目になっとった』と、言っとったよ」

その言葉を聞いて、母は照れ臭そうな顔をした。
娘時分に戻ったような感じで、自分の過去を振り返った。

「…そうやったかもしれん。都会の人と分かっとるのに、止められんかった。自分には無いものを持つお父さんに、強く惹きつけられた……」

決して馴染まないものだと思っていたのに、それを見ないようにした。

「夕夏ができて、一緒に住み始めて、改めて気づいた。『この人には海は向かん…。でも、自分は海がないと生きていけん…』ってーーー」


無理に馴染もうとする父に、不幸になって欲しくなかった。

「無理はせんとっていい…って言った。そしたら、この町を出ようと言われて……」


何かを思い出したように、声のトーンが低くなった。
食事していた部屋の中を見つめ、当時のことを考えているみたいだった。


「お父さんには…『ついて行けん』と断った……。波音や潮風のない所で暮らすことなんか、私は考えたこともない。やから、『無理や』…と言った……」


いずれは、そんな日が来ると、何処かでお互いが思っていた。