「澄良は波留に憧れとったのに、どうして海斗さんを選んだん?波留に乗せられたから?単純にそれだけ⁉︎ 」

波留は今でも澄良が好きなのに…
揺るがない…と、あれ程きっぱり言い切った程なのに…

私を見て、澄良はニコッと笑った。戯けたような笑顔のまま、彼女はこう教えてくれた。

「海斗さんは分かり易かったけぇ。優しさも言葉も、私だけに示してくれたし、いつも私にだけ特別だった……」

波留は皆に平等だったから…と付け加える。
何も知らない澄良に対して、腹立たしい思いが生まれた。

「そんなの……波留は不器用なだけやないの⁉︎ 」

彼の気持ちを知って欲しい。
片想いを続けている苦しい思いを……。

「不器用でも…言葉に出さんと分からんよ」

はっきりと澄良は理った。

「…夕夏だってそうやろ?好きなら好きって、きちんと声に出さんと分からんやろ⁉︎ 言葉にしてほしいし…でないと不安やない⁉︎ 不安を抱えたまま恋愛すんのなんて、難し過ぎるよ。私には……」

単純な方がいい。その方が嬉しい…と澄良は幸せそうな顔をして喋った。

「海斗さんと結婚して良かったと思っとる。波留に乗せられたからやない。あの人と居ると落ち着くんよ。心が手に取るように分かって。それをまた、きちんと声に出して言ってくれるし、態度にも示してくれる。だから……」

澄良の声を聞きながら、胸が痛くなったのはどうしてだろう…。

波留のことを考えていた筈なのに、いつの間にか、頭は航との生活に切り替わっていた…。