「私よりも付き合いの長い澄良を祝うって言わないのに、私を祝うなんて……」
「いいんよー。私には海斗さん達がいたし、皆が毎年、盛大に祝おう!って言ってくれたから…」

結婚するまでの2年間を振り返って話す。嬉しそうな笑顔が、少しだけ真顏になった。

「でも…波留に『祝う』って言って欲しかったかな…。誰にでも同じ様に接する波留の、「特別」になりたい気もしてたし……」
「特別?」
「うん…波留にとって、「特別」だと思える子になりたかった…。少し憧れていた時期もあったから…」

内緒よ…と指を立てる。

「…だけど、波留はいっつも「海斗に、海斗に…」って。まるで、最初から私と海斗さんをくっ付けたかったみたい…」

まんまと乗せられたんよ…と笑う。
薬味の好みを知っていた理由が、やっと分かった。

「夕夏の誕生日も、波留に言われて思い出したんよ。ごめんね。働かしたりして…」

誕生日にこき使ってごめん…と謝る。
謝られることなんかない。働いている間、何も考えずに済んだ…。

「楽しかったからいいよ…」

恐縮する。こっちこそ、お見舞いにホールケーキを貰ったばかりだ。


「今度、風邪が治ったら、盛大にお祝いしよう!もうすぐ海斗さんと波留も誕生日だし…」
「誕生日⁉︎ 近いん⁉︎ 」
「うん。…2人とも同じ8月30日!」

30歳になるなんておじさんだよねーと笑う。

偶然すぎて声にもならない。
片想いの相手が、自分と同じ誕生日の友人と結婚したなんて。


運命とはいえ……皮肉すぎる……。