…だから、キミを追いかけて

「えっ…ここって……」

目の前に見えるのは、いつも観光客だけが見ている岩山。

「出て見るん?」
「当然やろ」

言い放って先に出る。
慌ててシートベルトを外した。

ガチャ…とドアを開けると、案外と風が強い。
海の表面が波打っている。沖の方も少し荒れているみたいだ。

「…お前、あの岩に伝わる昔話知っとるか?」
「知っとるよ。鬼が作った…とかいうのやろ?」
「そっ。あの島の足元に、鬼の座ったとされる岩があって、鬼の歩いた後は、深い淵になっとるって話だ…」

「そうなん⁉︎ 初めて聞いたわ」
「何や…そんなら話の一部しか知らねーんやな…良かったじゃん!また一つ利口になって!」

ははは…と笑われた。
楽しそうな顔する波留を見ているとホッとする。
恐そうな顔より、笑っている方が似合う。

「……良かった。先輩の機嫌が直って…」

海を眺めながらの呟き。

ここへも来て良かった。
海のど真ん中にいる気分。最高に気持ちいいかも。


「…あっ、渦ができとる!」

白い泡と碧の水が混ざりあって、右巻きにグルグルと巻き込んでいる。

「すごい勢い……飲み込まれそう……」

欄干に足を掛け、身を乗り出した。

「危ねーからやめろって!」

肩を押さえ込まれた。

「どうして⁉︎ もっとよく見たいのに…」

振り向いたら、すぐ側に顔があった。
ビクッと肩が上がる。