クネクネとカーブが続く山道を上り、開けた台地へと出る。
駐車場が予想以上に広くて、他県からの観光客もいるみたいだ。


「ねぇ、ここって観光地化されてんの⁉︎ 」

遠くから来ている車が多い。関東や北陸、中部地方辺りのナンバーもいる。

「盆の帰省客がいるんじゃねーか?この辺りは、地元もんしか来ねーし」
「あっ、そっか。今日が送り火だもんね」

迎え火に祖父のお墓参りをしたんだった。
大好きだったお酒を供えて、手を合わせた。

(…帰ったら仏壇拝まなきゃ…)

田舎の風習。
お先祖様を大切に…って、私らしくもないか。

「何や?」
「ううん。何でもない!行こっ!」

波留を追い越す。
駐車場から少しだけ坂を登ると、急に目の前が拓けた。


「うわぁ!何ここ!すっごい広いっ!!」

端から端まで何百メートルあるのってくらいの広大な原野が見える。
海岸から切り立った崖の上にある台地は名前の通り、千畳の広さがあると言っても過言じゃない。

頭の上では、トンビとカラスが自由奔放に飛んでいる。

風に吹かれて、気持ち良さそうだ。


「いい気持ち…風が涼しい……」

真夏だというのを忘れる。
こんな場所が地元の近くにあったのか…と思う。

「ええとこやろ」

後ろから声がした。
振り返ると、背の高い男性が笑っている。
日焼けして引き締まった体。
航にはない、力強さを持っている人……