…だから、キミを追いかけて

ポカーン…と、波留が逃げてった方を見る。

1時間後……彼と落ち合う?

あの……橋の袂で……?


「なんで……?」


さっぱり意味が分からない。
傷つかない恋愛をしようと決めたばかりなのに、いきなり男性に振り回されて。


「私って……やっぱり男運、悪いんかも……」


呟きながら海浜公園を後にする。


時間は確実に進む。

今はただ、その流れに任せるより他ないーーー。




家に帰ると、祖母からのお小言を預かった。

「全くあんたときたら、どういう生活しとんの!友達の家に行くなら行くで、早う言うてくれたら良かったのに!」

どうやら澄良から電話がきたのは時間が大分経ってかららしい。波留が起きたかどうかが気になって、きっとかけてくれたんだ。


「ごめんね……酔い潰れちゃって」

謝りながらお風呂に入る支度をする。
昨夜、波留と肩を貸し合って寝たから火薬の臭いが染み付いていた。

「私、お風呂上がったら出かけるね。友達と約束しとるの!」

一方的にされたんだけど。

「そうかね。それじゃあこれは今渡しとくわ」

「はい…」と、手を伸ばしてきた。

何気なく握られてる拳を見つめる。小さな箱の様な物が、指の隙間から見える。


「おばあちゃん…これは?」

指差した。

「美帆に預かったんや。昨夜あんたが旅館で接待したお客さんからのお礼や…って」