「ふぅん…大変なんやね」

「火元も近いしな…って……なんだよお前」

「んっ⁉︎ 」

すぐ隣にある顔を見返した。


「今日やたら性格丸いな。いつもの威勢の良さは何処やったんだよ」

疲れてる人に気遣われている。……何だかおかしい。

「そう言う波留こそ、やけに人丸いやん。……疲れてんの⁉︎ 」

クスクスと笑う。灯台の天辺から降りてきた人と同じ人には思えないくらいの柔らかさだ。


「疲れとう……ちょっと、肩貸せ!」

「えっ…⁉︎ 」

ふさっ…と頭が近寄り、肩の上に乗った。

火薬の臭いがする髪の毛は、毛先のあちこちが焼け焦げたように縮んでいる。
そのままの体勢でビールを飲んでいた波留が、いつの間にか眠り始めた。


「えっ…⁉︎ ちょっと波留…⁉︎ 」

ぎょっとして顔を覗いた。
まつ毛が下を向いている。
唇を半開きにしたまま、スースー…と寝息が聞こえている。


「今年の犠牲者は夕夏やね」

澄良が呆れるように笑った。

「去年は星流でその前はキヨ。毎年毎年、恒例になってんな!」

海斗さんまでが顔を見に来る。

「余程、神経使うんよ。見て。熟睡!」

4人が一斉に顔を覗かせる。
それでもビクともしないまま、波留は眠り込んでいた。

「この人……毎年こんななん⁉︎ 」

弱り果てて聞き直した。

「うん。熱い場所に居ると疲れるんかなぁ。いつも終わると熟睡してんなぁ」

「私の時なんて2時間近く起きんかったよ。お陰で肩痺れて大変だった」

今年は助かった…と澄良が囁く。