「…俺は高校進学と同時に遊樹を連れてこっちに来た。

元々此処は俺のいた街だったしな」


「…………尊さんも…」


「ん?」


「…遊樹先輩も……


辛い想いしたのに…その人のことを愛し続けれるんですね……」



さっきまでの真面目な顔から、少し楽になったような顔に変わる。


「……まあ…最初は受け入れたくなくて……だったんだけどさ。

時が経つと『ああ…もう逢えないんだ』ってなってくるんだよ

やっぱりさ、どれだけ自分に言い聞かせても最初は『アレは夢だった』って思っちゃうからさ……」


「…………俺は…」


「…お前のお母さんの話は真希ちゃんに聞いてる


多分同じだろ?」

「……………………」


母さんが死んだ時…


最初は家に帰れば晩ご飯の準備しながら待っててくれてる…とか……

行事にも来てくれるかな…とか……





確かに尊さんと同じだ。


誰だって、分かってても最初は受け入れられない。

今までの思い出を現実と重ねて見てしまう…



俺が母さんは死んでるって…ちゃんと受け入れられたのは……どうしてだっけ……?


「小毬の事も知ってる

知ってる事をお前に隠してたのは…知った時にお前があいつから離れて行ったら今度こそあいつが……


『壊れる』



そう思ったから……


悪かったな。

黙ってて…



でも、



一つだけいいか?








俺らは咲紀、由莉の件であいつに嫌われてる。


だから…俺らは側で守る事は出来ない。


聡。


お前があいつを守ってくれ。


お前は…あいつの事が好き…なんだろ?」