その後、警察やら救急隊が来て俺は事情を聴かれた。


それらから解放された頃にはふらふらで、何も考えたくなかった。


そんな中、一つのことだけ考えてた。



由莉の居ないこんな世界……俺なんかが生きてる意味が無いって。


だったら、由莉の後を追いかけて……死のうって。



そう思ったらあとは早かった。


近くのビルの屋上まで行き、下を見る。

ああ、由莉はこんな高い所から飛び降りたのか……




辛かったんだよな。

痛かったんだよな。

助けて欲しかったんだよな。


それなのに…俺は……

自分の過去に怯えて助けることが出来なかった。

いや、しようとしなかったんだ。



ごめん。ごめんな。


また溢れてきた涙を乱暴に拭って、目の前を向く。



そして、由莉と同じように…タンっと飛び降り……




れなかった。


「ばっか野郎‼︎」

「……尊、さん…」



尊さんが俺の腕を掴んで引き止めていた。


な、んで…なんでこんな所に尊さんが……




「咲紀の親から泣きながら電話来たんだよ


由莉ちゃんが死んだって…それで、茶髪の男の子が憔悴しきった顔でどっか行ったって!


お前も死ぬのかよ!」

「……俺は…由莉を…」

「由莉ちゃんが死んだのは少なくともお前の所為じゃねえだろ!


確かに、助けてやれなかったのはお前の責任だ!」


…………っ…


「でも、だからと言ってお前が死ぬ必要あるのかよ!


生きているお前に出来ることは一つだろ⁉︎


生きろ!



生きて由莉ちゃんの分まで…

生きて由莉ちゃんがやりたかったことを成せ!



由莉ちゃんを助けられなかったことを嘆くなら言ってやる!

それが生きてるお前に唯一出来る償いだろうが!」


尊さん…


「今は…泣きたいだけ泣けばいい

でも、時が過ぎたら泣くな」


「……っ…ひっ…く

……あ、ああ…



ああああああああああああ!」


尊さんに頭をゆっくり、まるで子供を撫でるように撫でられて


ここに来るまでかなり泣いたはずなのに、涙はどんどん溢れてきた。





どれだけの間泣いていたのかはわからない。

でも、俺が泣いている間尊さんはずっと俺の頭を撫でていた。


「よしっ

泣き止んだな?



もう、これでお前はこの件で泣くな

いいな?」

「……………ああ。


当たり前だ。



もう泣かねえし、もう選択を誤らない。


由莉が生きたかった世界を生きてやる」


目元を強引に拭って

尊さんを真っ直ぐ見て告げる。


これは、俺の罪。

俺の業。


由莉。

お前の元に行くのはもう少し後でもいいか?


俺は、お前がやりたいって言っていた沢山のことを一つ一つ、


失敗してもいい。


やり遂げてみせる。




だから…見ててくれ。





*KISAside、end*