母さんは優しかった。

天然なところもあって、それなのにちゃんとするとこはちゃんとしていて……


俺たち家族にとってかけがえの無い存在だったんだと思う。




そんな家族に好かれた母さんは俺が中学に上がる前に死んだ。


交通事故で即死だったらしい。

その時は信じれなくて、真希と二人して「違う!」「帰るのが遅いだけ!」って、否定した。

でも……


それでも、病院の慰安室に横たわる栗色のふわふわした髪の持ち主は紛れもなく母さんで……

母さんに触れても、揺すぶってもなんの反応もなく、ただ冷たくそこに横たわっていた。


不思議と慰安室では涙は溢れなかった。

多分、頭が付いて行けてなかったんだと思う。

悲しくて、哀しくて……


泣いてももう、慰めてくれる人はいないんだって……

俺が、真希を慰めなくちゃって……


でも、病院を出て後から慌てて来た父さんを見て泣くのを堪えることなんて出来なかった。