「いたっ」

「…あ……」

「……あーあ…」


尊さんが投げたカンは偶々通りかかった聡に当たった。


「ちょっと尊さん。

なに投げてんですか!」

「あははー

気にすんなって」

「お年寄りに当たったらどうするんですか」


…聡の方が教育者に向いてる気がする……


あれ?

そういえば…

「小毬はいないんだな」

「あー…まあ……

ちょっと花屋に行くだけだったんで」


そういう聡の手には赤い花。


「ふーん…

あ、そうだ聡」

「ん?なんです?」

「こいつ。

俺的にカウンセラー似合うと思うんだけどさ、




どう思う?」


「どうって……


いいんじゃないですか?

俺はいいと思いますよ」


あっさりと言いのける聡に驚く


……俺は………


今は別になりたいものがある訳じゃない。

ただ、俺に出来ないと思ってるだけ。


人一人守ることさえ…

愛する人を守ることさえ…


出来なかった俺が出来ることなんてあるのかって……



そう考えてるとおもむろに尊さんが真剣に話し出す

「てかさ…お前はずっと守れなかったって嘆いてるけどさ…

それにお前も聡も知ってると思うけどさ……



俺だって遊樹と同じで咲紀のこと死なせたんだぜ?

まだ…俺の気持ちの全部伝えてないんだぜ?




それでも、前を向かないとどうしようもない。

そりゃあ…咲紀のことは毎日考えるけどさ……



でも、前を向かないといけないんだよ。

後ろを振り返ることをしてもいい。

てか、俺らの場合しなくちゃいけない。


それでも、後ろに気を取られすぎない様に前を向くんだ」


…………尊さん……




あーーー‼︎

くっそ!


なんでこうも俺の周りにいる奴らってこうも…




俺は前髪をかき上げてベンチから立ち上がる。


…やってやるよ……


後ろを振り返ったって…

前を向き続けてやってやる……!


「…やってやる……!


俺が出来ることを……!

前に向かって……!」



見ていてくれ……由莉………!

俺が…出来ることを……!





*KISAside、end*