中学1年生の春
そう。あの日から。


「隼!早く早く~!」
中学校の入学式。
桜の花びらが、地面いっぱいに広がっている公園を抜けて、大きな坂を駆け足で登った。
「おいおい、 葵!前見ろ!あぶねーぞ!」
「大丈夫、大丈夫。てか、隼が早く来れば後ろ向かなくて済むでしょ!」
呆れた顔をして私を見ているのは、
中山 隼 (なかやま じゅん)、私の自慢の幼馴染みなんだ。
「って…うわあ!!」
「ったく、言わんこっちゃない。」
つまずいて転びそうになった私を隼が片手でヒョイっとすくい上げた。
……。顔が……近い……。
「前見ろっつたろ?危なっかしいな。」
それに、耳元で話されると……。
「……ぷっ、くははは! お前、タコみてえ!マジうける…!」
「う、うっせ、ばかっ!」
「はぁ?! バカはどっちだよ。」
「……近い。」
「え?っああ!わりーわりーつい。っておい!ちょ、待てよ!」

私、城内 葵 (きうち あおい)。小さい頃からおてんばで男勝り。兄の影響で野球が大好き。