私も立ち上がった。

 そしてヤツの後をついていく。

 ああ・・・さようなら、私の可愛い夢。私の可愛い結婚イメージ。

 えぐい現実の前にはそんなものあまりにも力が弱かったんだ。好きな男も出来ない私に幸せな結婚なんて程遠いではないか。だってその可愛い夢を叶える最初の第一歩は、ただ一人の男にベタ惚れすることなのだ。

 ・・・で、それすら出来ないまま32歳の毎日を進んでいる。

 だから選んだのだ。

 この契約結婚を。

 これも親孝行だと思って。


 私の名前は漆原都、32歳。ついさっきまで独身で、フリーターで、ニートの、将来に夢も希望もない女だった。

 ちょっと、私の話、聞いてくれる?