明け方、同じベッドに寝転びながら、聞いた。

 いつから指輪隠してたの?って。

 ヤツは邪魔な前髪を引っ張りながら、ぼそりと答えた。私が家出から帰ってきた後って。親から貰った指輪の話のときに、サイズも判ったからって。

「家に帰ると、真っ暗で、暑かった。ご飯を作ろうと思ってもやる気なんて起こらなくて。かったるくって、うんざりした。明るい声がない。バタバタとうるさい足音も鼻歌もない。あれしろこれしろって指図の声もない。隣の部屋に誰もいないって、やたらと気になったんだ。それで思った。自分で考えてるより――――――――」

 ・・・居心地がよかったんだな、って。

 俺は都がいいんだなって――――――――――



 日曜日の昼間、私は洗濯物を干しながら、座椅子でダレる彼に聞いた。

「ところで、自分の指輪は?」

「ない」

「――――は?何でないのよ。普通、ペアで買うでしょ」

 だって、結婚指輪だろ?

 ほとんど寝かけるような状態で、だらだら~っとヤツは答える。

「・・・試着とかデザインとか文字入れとか、色々言われて面倒だった」

 私はつい眉間に皺を寄せる。・・・何だよ、それ。

「買いに行きましょ」

 洗濯籠を押しのけて、私は仁王立ちになる。