ちょっとずつでいいから。

 胸の中で呟く。

 もう、子供だとか焦らないから。

 だって、どうしようもないことなのだ。自力だけではどうしようもない。そして、それ以上に、今をちゃんと生きないと、それこそご先祖様に申し訳ないと思えるくらいには立ち直った・・・いや、開き直っていた。

 二人でいいから。

 私達、二人で。

 下らない話が出来て、一緒にご飯が食べれて、それでいいから。

 ちょっとずつ、仲良くなっていきたい。

 この人と。


 怒るときは私だけで、暴れたりパニくるのも私だけ。でも、そのいつでも淡々として変化なく自己を保っていられるのが、今では絶大なる安心感へと変わって行っている。

 押しても引いても蹴っ飛ばしてもどついても、倒れそうにない。ゆるゆると流れる青い水のように、他のものに自らの形をあわせて流れていきながら、俺は俺だ、という真っ直ぐな柱のようなものを体の中心に持っている男だった。

 それは、素晴らしいことだと思った。

 わたわたと慌て、他のものと比べては落ち込んだりする私には、羨ましいぶれなささだった。見事な、自己完成度。

 私達二人はもう何か、老夫婦みたいだけどと一人で苦笑する。

 だけど、ヤツも私のことは嫌いじゃないみたいだし、これはこれでいっか。

 そんな風に吹っ切れていた。