うーん、と微かに首を傾げて、額の汗をハンカチで拭きながら彼が言った。
「・・・いや、ほとんど変わってない、けど・・・。明るくなったかな。感じが。髪も伸びて大人っぽくなった」
「まあ、そりゃあ明るくはなるわよね、最後に会った時はどん底にいたからねえ」
今では笑い事に出来ると苦笑しながら言った。
彼も下を向いて笑った。そして、元上司の不倫相手が九州へ飛ばされたこと、ついで離婚もしたらしいってことを聞いた。
へえ、と思った。ただ、へえって。
あんなに好きで、日陰だろうがなんだろうが一緒にいたいって思って4年も焦がれた男の悲しくて厳しいその後の話を聞いても、私は動揺したりしなかった。
確かに、その間に恋は終わったのだ。
そして揉まれまくって、私は強く・・・もしかしたら鈍くなっていたのだ。
彼が今も奥さんと生活していたら悔しいだろうか、と考えたことがある。だけど、いつでもその答えはノーだった。
彼がフリーの時を知らなかった。だから、比べようもなかったのだ。最初から誰かのモノで、私はその甘く濁った光る上澄みを飲んでいただけだった。
離婚、しちゃったんだな。
当たり前だけど、彼の人生は私より大変なんだろうな。出来たら恨みたくはないし。お相子だと思いたい。だから彼の現在の境遇には軽い感想しかなかったけど、彼の元奥さんに対しては、改めて申し訳なさがこみ上げてきた。
何が彼女にとっての幸せかは判らない。だけども、あの日のあのタイミング、私が波に乗りさえしなければ、彼女は彼と今でも幸せでいたかもしれないと思うから。


