「物思いのお供は煙草と珈琲」


物語は再び現在の俺に戻る。

…昔のことを思い出すってのは想像以上に恥ずかしいものだ。

ほんの五年前のことだというのにどうしたって若さゆえの痛々しさがかいまみえる。

それにしても懐かしいな如月千恵美。

元気にしてんのかなぁ。

妹の話じゃなかなかの名門大学に通っているらしいが…。

頭よかったもんな千恵美。

俺とは大違いだぜ。

「…ふぅ…ヤニヤニっと」

胸ポケットから煙草を取りだし、慣れた手つきで火をつける。

濃厚な煙を吸い込み、吐く。

たまらん。

今年、俺は21になった。

いわゆる成人を越えたってわけだ。

タバコも酒もパチンコも公認ということになる。

大人という言葉を実感するようになる。

が。

たいして中学生の頃の俺と変わっていないように思う。

21歳の男ってのはそんなもんじゃねーの?

プルルルルプルルルル。

携帯の着信音が鳴る。

「もしもし」

『うぃーっす拓也おれおれ』

「おれおれ詐欺ですね通報します」

『だぁーっ! 違うっての! 俺だよ! 朝橋廉矢! おまえの大親友!!』

「冗談だよ冗談。つーか画面に出てくるし」

『ま、いーやおまえ今日の夜暇?』

「ん、まぁな。夜勤とかも特にねーし、明日も俺は休みだ」

『うっし飲みいくぞ』

「またかよ…」

『ちなみに金はないから割り勘な』

「わかりましたよ…っと。そんじゃな、仕事頑張れよ」

『へいへいほー』

ピッ。

朝橋廉哉。

保育所から小中高とずっとつるんできた俺の一番の親友だ。

廉哉は地元の専門学校に二年通ったのち、俺に続くかのように上京した。

同郷の友ということもありお互い気兼ねしない存在というのは実にありがたい。

…でも毎週サシ飲みってのはどうなんだろうな。

そういって俺はコーヒーを飲み干した。