どういう意味だよ、というような目つきのまま、カップの珈琲を持ち上げる涼太が一口飲むのを待って口を開いた。
「私のために営業君の知り合い関係で合コン開いてくれるって言うから、それと引き換えに営業君と逢って欲しいって頼んだの」
「合コン?」
その言葉に目の前に座る涼太の目がすぅーっと細められる。
俺という奴がいながら、合コンをセッティングしてもらうなんて、どういうことだ。そん感じだろう。
さっき感じた面倒くささがまた甦る。
これは、早いうちに誤解を解いておかなくちゃ。
「えっとぉ。違うからね」
「違うって、何が」
問い返された声がいつもより低めで、眉間に深い皺まで寄っている。
さっきまで落ちついていたはずの私の感情が、ザワザワと慌てだして萎縮していく。
涼太の不機嫌な目にもタジッて、私は急いで説明を付け加えた。
「合コンていうのは建前でね。ほら。私って、彼氏いないことになってるから――――」
「おいっ。ちょっと待てよ。彼氏がいないってなんだよっ。俺の存在はっ?」
さっき細められた目が威嚇に変わった。
ひょえーーーっ。
益々誤解が深まってしまった。
「えっと、えっと」
違うっ。
違うのよ。
だからっ、そのっ、えっとっ。
慌てる私は、説明しなきゃいけない言葉が巧く纏まって出てこない。
「恭子にとって俺は彼氏じゃなかったんだな。てか、俺は要らないってことか」
「ちがっ! 違うって。落ち着いて、落ち着いてっ」
やたらと冷めた表情で私を見ている涼太。
対照的に、誤解を早く解かなくちゃとあわてている私は、そばにあったカップに手を引っ掛けて落っことしそうになり一人大騒ぎ。
そんな私に向かって、涼太の冷静な声がふりかかる。
「落ち着くのは恭子だろ?」
溜息と共に言われ、そうだったと私は落とさずに済んだカップをしっかり手に持ち、冷めてきた珈琲を一口喉に流し込んで心を落ち着ける。