ひなのにちじょう

 もう!!もう!!髪が!!髪がぁ…。
 まるで櫛と対決しているように縺れた髪は、これまでいくつもの櫛を犠牲にしていた。

 洗面所にあるゴミ箱には、今月の犠牲者3名の亡骸がある。
 ごめんなさい…お櫛様。
 全て…わたくしの髪が…髪がぁ!!

 「ひな!!ひーなー!!本当に遅れちゃう!!」
 「わ、分かってる!!だってひなの娘が!!ぜっさん反抗期なんだもん!!」
 勿論、娘というのはひなの髪のこと。
 「なに訳のわからないこと言ってるの!?」
 「本当のことだもん!!」
 お母さん!!分かってよぅ!!
 
 ようやくほどけた髪をおさげにし、ぱちんと自分の頬を叩く。

 「よし!!頑張れひな!!」

 すぅっと息を吸い、胸に手をあてる。
 高校生活が始まる。
 中学生じゃない。高校生だ。
 今までとは違うんだよ!!ここに、思いを秘めて。

 「おかーさーん!!準備できたよ!!」