亜里沙は一人、夕刻の空に赤く染まる川を眺めていた。
川音は涼やかで、近くの公園から聞こえる子供たちの声が、時折吹く風によって運ばれてくる。
そこでひとり佇みながら、彼女は生徒会長選挙のことを考えていた。
「やっぱり…あいつらには勝てないんだろうか…」
綾小路の卑怯な手段により、選挙の形勢が一気に逆転されてしまったことを聞いて、彼女は、そう考えてしまっていた。
下校中の彼女に野球部の部長、松田亮介が
「すまない、葉山。俺だって、お前らを裏切りたくなんかなかったし、応援したいんだけど、しかたないんだ」
そう言ったあと、続けて
「葉山…いま、こんなこと言うのは勝手かもしんないけど…
俺も、悔しいんだ。悔しいんだ…。だから…勝ってくれ」
そう言われて、亜里沙にも彼の無念が十分に伝わった。
「負けたくない」
その思いは変わらない。いや、むしろ今回のことを知って、その思いは余計、強いものになっていた。 でも…
「何やってんだ?こんなところで。この前、あんなことあったばかりなんだから、早く帰れ!」
亜里沙がその声に振り返ると真鍋勝弥が立っていた。
「あ!真鍋君、この前は本当にありがとう。」
「別に…礼なんか、いいよ」
勝弥はそう言いながら、亜里沙の隣に来て、一緒に川を眺めた。
「真鍋君、ごめんね…真鍋君が一生懸命守ってくれたのに、アタシ負けちゃうかもしれない…」
「…………」
勝弥は黙って、川を眺めていた。
「アタシ…悔しい…」
亜里沙は勝弥の顔を見て安心したため、これまで張りつめていた糸がプツンと切れてしまった。
「悔しいよ…」
亜里沙は感情と涙を抑えきれなくなっていた。でも、あんな奴らに泣かされるのは嫌だ。
でも…でも…目から涙が溢れそうになる。
そのとき
亜里沙の左手を勝弥がギュッと握ってくれた。
一瞬、どきっとした亜里沙だったが、
その手が暖かくて、優しくて…
亜里沙は涙を堪えた。
そんな亜里沙に勝弥が言った。
「なぁ、ケンカって勝ち負けのルールなんてないのに、なんで勝負が決まると思う?」
「え?」亜里沙には、その答えが分からず黙っていると
「どちらかが、『負けた』って諦めたときに勝負が決まるんだ」
「………」
「今日は念のため家まで俺が送ってくからな」
「え!大丈夫だよ…」
「うるせぇ!送る!」
「…うん……」
2人は手を繋いだまま、夕日が暮れる川を、ずっと眺めていた。
川音は涼やかで、近くの公園から聞こえる子供たちの声が、時折吹く風によって運ばれてくる。
そこでひとり佇みながら、彼女は生徒会長選挙のことを考えていた。
「やっぱり…あいつらには勝てないんだろうか…」
綾小路の卑怯な手段により、選挙の形勢が一気に逆転されてしまったことを聞いて、彼女は、そう考えてしまっていた。
下校中の彼女に野球部の部長、松田亮介が
「すまない、葉山。俺だって、お前らを裏切りたくなんかなかったし、応援したいんだけど、しかたないんだ」
そう言ったあと、続けて
「葉山…いま、こんなこと言うのは勝手かもしんないけど…
俺も、悔しいんだ。悔しいんだ…。だから…勝ってくれ」
そう言われて、亜里沙にも彼の無念が十分に伝わった。
「負けたくない」
その思いは変わらない。いや、むしろ今回のことを知って、その思いは余計、強いものになっていた。 でも…
「何やってんだ?こんなところで。この前、あんなことあったばかりなんだから、早く帰れ!」
亜里沙がその声に振り返ると真鍋勝弥が立っていた。
「あ!真鍋君、この前は本当にありがとう。」
「別に…礼なんか、いいよ」
勝弥はそう言いながら、亜里沙の隣に来て、一緒に川を眺めた。
「真鍋君、ごめんね…真鍋君が一生懸命守ってくれたのに、アタシ負けちゃうかもしれない…」
「…………」
勝弥は黙って、川を眺めていた。
「アタシ…悔しい…」
亜里沙は勝弥の顔を見て安心したため、これまで張りつめていた糸がプツンと切れてしまった。
「悔しいよ…」
亜里沙は感情と涙を抑えきれなくなっていた。でも、あんな奴らに泣かされるのは嫌だ。
でも…でも…目から涙が溢れそうになる。
そのとき
亜里沙の左手を勝弥がギュッと握ってくれた。
一瞬、どきっとした亜里沙だったが、
その手が暖かくて、優しくて…
亜里沙は涙を堪えた。
そんな亜里沙に勝弥が言った。
「なぁ、ケンカって勝ち負けのルールなんてないのに、なんで勝負が決まると思う?」
「え?」亜里沙には、その答えが分からず黙っていると
「どちらかが、『負けた』って諦めたときに勝負が決まるんだ」
「………」
「今日は念のため家まで俺が送ってくからな」
「え!大丈夫だよ…」
「うるせぇ!送る!」
「…うん……」
2人は手を繋いだまま、夕日が暮れる川を、ずっと眺めていた。


