「湊ー!」
「…………」
彼はあたしたちの目の前にいるのに反応をしなかった。
ギターを一瞬弾いてみたり、紙にサラサラと書いてみたり
とにかく何かに集中しているようで一切こっちの存在には気付かない。
「まぁいいや。アイツは作曲に近くを入れてるようだし……」
「広夢が言ったからだろ?湊が曲作らないならラブソング歌わせるって言ったから」
「確かに。さすがにあの我儘ボーカルもそれを言われたらやるしかないからな」
……そっか。だからあんなに集中して学校の授業の合間にも作曲してるんだ。
あたしも美紀にブルーウィンズの話を聞いてて我儘な人だって思っていたけど
実は彼は結構頑張りやさんなのかもしれないな。
ジュースの缶のプルタブを開けてグレープフルーツジュースを飲みながら、彼にばれないようにあたしは彼を見つめていた。

